時代を映す

録を残す、と言い換えてもいいかもしれない。世にある芸術や想いや思考の粋を詰め込んだ記述は「その時代の記録」だと思う。次代は全てその恩恵の上に築かれる。師から指導されて作品や研究結果を残した経験があるなら、その実感は共通なのではないか。

映画「みんな生きている」を創った樋口大悟くんから「俳優として非血縁移植の経験を映画にしたい。どう思いますか」と相談された時の私の答えは、迷わず「映画を創らないと闘病が終わらない、でしょ?協力は惜しまないよ」だった。それから映画という芸術の特性として監督・プロデューサー・出演者・スタッフ・資金と部外協力者の調整へと多勢の連携へと進んで行く行程を近くから見ることになった。2年近いその経過中、「こうしてまた1つ作品が世に残る」と思い、その一端に参加できていることが感慨深かった。

貴重だった紙や布にやはり貴重な墨を使って書かれた古事記や日本書紀。おかげさまで私たちは、紙に筆を滑らせた1300年前の人たちの手元を見ることができる。手首にかかる衣類は麻だろうか、木綿だろうか、上級クラスの人だったから絹だろうな。夜半の灯りが豊富ではない時代だから、朝早くから寒い季節も廊下側を開け放って…、等と想いを馳せる。それができるのも「その作品」があるからだ。作品中の物語の信憑性は問題ではない。ともかく「その時代に生きつつ記述したこと」が後の世への宝となる。

私もいま共にある人たちと真摯に向き合い、そこから立ち昇る気分や想いを私なりに記録していこうと思う。いつの日か夥しい記録の中から私たちのアクティビティーに触れた人たちが、この連携があって良かった、と感じてくれると信じて。

A.Hashimoto's blog

母の心、ふんわりんりん…

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