理学療法士さん

「では次に右脚をこの方向に動かしてみてください」。

病室に入ると、ベッドに屈みこんだ男性の背中と、家人の素足が見えた。半袖姿のスタッフユニフォームの男性は、傍らに立った私に気づくと、胸元に下がっていたご自身の名札を示しながら「寝返りの仕方をお伝えしております」と、穏やかな表情と声で手短かに説明。私は「お世話になっております」と会釈して、どうも始まったばかりらしい、これから時間がかかる、と想定し、「では宜しくお願いします」と言って病室を出た。

でも直ぐに取って返し、「すみません、お仕事中」とお断りしてから、失礼しますと言いつつ写真を撮らせてもらった。遠方で見舞いに来られない娘が気にしている。娘も医療者なので無暗に不安でいることはないと思うものの、ともかくも手術は無事に終わり、その後のケアが開始していることを伝えたかった。「理学療法士さんの対応中」は、ある意味ちょうど良いシーンに遭遇したことになるかもしれない。

写真は3枚。理学療法士さんが画面半分で、下に懸命に天井を向いている家人。少しだけ横へ向いたところ、寝返り成功。病院を出ながら娘に送信すると、すかさず娘から、拍手のイラストが返信されて来た。

先ずは現時点での最先端の知見と技術を駆使して手術。その手術という医師の領域から患者は直ぐに看護、コ・メディカルへと委ねられる。理学療法士さんの対応はその流れのひとつなのだろう。こうして医療で痛みや耐えがたい痺れを除去してもらったのだから、これから再発を防いでより良く暮らせるかどうかは、ひとえに当事者(患者)の姿勢にある。

家族としては、今こうして辿り着いている最先端の医療施設に感謝し、これからより良く術後の暮らしが送れるよう伴走していくしかない。

娘に写真を送信して少し経ったところに、家人から「理学療法士さんが、‘奥さんがお見えでした。写真を撮って帰られましたよ’とおしえてくれました」とメール。外は本当に寒い日だったが、病室での柔らかい会話が想われて、胸に温かかった。

A.Hashimoto's blog

母の心、ふんわりんりん…

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