エスカレーターから真っ逆さま

酒どころ秋田では、行くたびに超美味しいお酒と肴を堪能する。もちろん私の立場で訪問するのだから、そこが秋田でも北海道でも沖縄でも、仕事(フォーラム開催や、講演)。物見遊山ではないのだが、つばさのイベント開催後は懇親会が付き物で、どこの会場で開催しても美味しい思い出がたっぷりある。とりわけ秋田にはお酒の好きな先生方がお揃いで、終了後懇親会はもちろん前夜祭も用意していただける。初夏に伺うと、山菜の種類の多さにびっくり。秋から冬では、地鶏と舞茸がたっぷり入ったキリタンポ鍋。合わせて美酒が次々と、で宴は盛り上がって…、という次第。

そんないつもの、前の日飲み会の後だった。ホテルのある建物入り口へと車で送り届けてもらって、運転席の現地主催者の友人(彼女は一滴も飲めない完ぺきな下戸)と、後ろの席のお酒好きの先生(小児科医)に手を振って別れた。その日は空港から料理屋さんへと直行だったので、まだチェックインしていなかった。ホテルは1階にスーパーマーケットや書店などが入った建物の2階にある。夜もだいぶ遅かったので、1階は誰も歩いていない。エスカレーターを上がって、自動ドアを入るとホテルのロビーがあるのだな、とわかったのは、あと3段くらいでエスカレーターが到着というところだった。そこで、なぜか後ろ向きにすっ飛んだ。幸い、カートは最上段に到着させて、私だけ後ろ向きに転んだようだ。ブーツを履いていて、そのブーツが車から降るときに振っていた雨で濡れていて、滑ったのかもしれない。しかしブーツだったことは、数回転しても足にけがをしなくて済んだ理由かもしれない。頭も打ったのだが、あまりたいしたことはなく、あとから猛烈に痛くなったのはわき腹だった。エスカレーターの3分の2くらいまで下に、どんどんどん、と回転して落ちて、しかし昇りだったから「落ちたな」と思っているうちに最上段まで着いていた。この時が、夜遅くて良かった。誰も他にはいなかったから、人を巻き込まずに済んだことは幸いだった。

最上段まで帰る間に態勢を縦にして、カートに「お待たせ」と言ってからホテルに入った。何事もなかった顔でチェックインし、部屋に入ったあたりからわき腹が痛み出した。痛みで眠れない、という経験は初めてだった。翌朝、8時になったのを見て、現地主催者の友人に電話で「実は転んでしまって。口は動くので司会は問題ないと思うが、この痛みを何とかしないと」と相談すると、即、昨日の飲み仲間の先生に連絡をしたのち、すぐに車でやってきてくれた。彼女の運転で病院に着くと、入り口で先生が立っていた。友人は、セミナー前に現地ボランティアグループの総会があるので、と言って会場へと向かう。私はそのまま先生に整形外科の診察室へ通され、次にレントゲン室へと連れていかれた。レントゲン室からでると、目の前のベンチで小児科の先生が待ち構えるようにして座っておられた。私がヨタヨタでていくと、先生は無言でレントゲン室に入って行く。後で聞いたところ、「頭も打った、とも聞いたので、レントゲンを見ました」とのことだった。結果的に、わき腹の打ち身だけだった。整形の先生が「骨、しっかりしてますね(骨密度が高く、骨粗鬆症が無い)」と感心してくださったのは、嬉しいおまけだった。「私は骨太の女」とこの後ジョークを飛ばすことになるが、何事もなかったから言えることではある。湿布薬と痛み止めを処方されて、「来週あたり、もう一度診ましょうか」とのことだったが、ちょっと遠いので、と丁重にお礼を言ってヨタヨタと外来を出てきた。小児科の先生が薬局に薬をもらいに行ってくれて、車に同乗させてもらってフォーラム会場へ。口は普通に動いて、問題なく進行できた。そして、終了後にやっぱり懇親会が用意されていた。先生がビールを注ごうとしてくださったので、「さっきロキソニン飲んだばかりですけど」と言うと、先生「ロキソニンくらい大丈夫ですよ」。さすがである。

この出来事を思い出したのは、実は昨夜、美味しいお酒を楽しんだあと、どしんと尻餅を突いてしまったからだ。新宿のサブナードを気持ちよく歩いていたら、前を行く人が急に方向転換したで、避けよとして転んだのだった。飲めば足元がふらつく。そろそろ、自覚しないと。

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母の心、ふんわりんりん…

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