映画「マイ・バッハ 不屈のピアニスト」

ジョアン・カルロス・マルティンス(ブラジル出身)の半生のドラマ。20歳で鮮烈のカーネギーホール・デビューを果たして、天才の名をほしいままに大活躍していく。しかし不慮の事故で、ピアニストとしてたいせつな指3本がマヒしてしまう。

映画では詳細に触れないが、幼少期の描写で喉に手術痕を見せている。つまり、万全な健康に恵まれていたわけでもなさそうだった。それでもジョアンは、ともかくも天才だった。最初に師事した優しい女性の先生が、「もう私が教えられるのは、ここまで」と別れを惜しみながら次の師へと送り出すシーン。ここは母親の視点で観てしまって、成長とは辛く寂しいことでもある、と思った。やがてそこから順調に、激烈にバッハ弾きとして駆け上がる。世界から注目が集まって、名声をほしいままに音楽家として順風満帆の日々を送る中、不慮の事故に見舞われる。診断の衝撃。歩こうとしていた道が唐突に遮断されて、ジョアンはもだえ苦しむ。バッハの全曲が全身に宿っているのに、右腕の3本の指だけが動かないのだ。自暴自棄の暮らしが続き、やがて妻は離れて行き、世界は彼を忘れていくのだった。

しかしジョアン・マルティンスは、バッハを弾くことを渇望。他の生き方を知らなかった。ついに奇跡的に復活して、世界の著名な音楽ホールを観客でいっぱいにしていくが、厄災が再び襲い掛かる。

ジョアンの指がもう二度と戻らないとわかって「もうピアノが弾けない」と嘆いた時、「でも音楽はやれる」というアドバイスが光る。最後のシーンで涙が止まらなかったが、映画館で泣いていたのは私だけだろうな。人生とは「一生懸命に生きることだ」、と思った。

A.Hashimoto's blog

母の心、ふんわりんりん…

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