『贈る言葉』
ふと耳にした曲の歌詞の中で「ああ、このフレーズ、響くなあ」と思うことがある。流行っていたころは別の、いわゆるサビの部分が良かったのかもしれない。いま聴いて、心の状態や置かれている環境などから、きっと受け止め方がかわったのだろう。ずっと前に読んだ小説が、もう一度読むと別の印象になるのと似ているかもしれない。
『贈る言葉』は、1979年から放送され始めたテレビドラマ「3年B組金八先生」の主題歌だった。実は、当時もそれからも、そしていまも、「人は悲しみが多いほど、人には優しくできるのだから」には、そうかな?という違和感がある。ただ、その理由などをごちゃごちゃ言うのは、詩や歌や文芸に対しては野暮というものだ。でももし説教としてこれを言われたら、きっぱり反論する、というところだ。
それでもこの歌詞の全体からは、夕暮れの街へと歩きゆくだれかに向けて、惜別の想いを心に描いている人の佇まいが、柔らかく迫る。
暮れなずむ町の 光と影の中
去りゆくあなたへ 贈る言葉
悲しみこらえて 微笑むよりも
涙かれるまで 泣くほうがいい
人は悲しみが 多いほど
人には優しく できるのだから
さよならだけでは さびしすぎるから
愛するあなたへ 贈る言葉
夕暮れの風に 途切れたけれど
終わりまで聞いて 贈る言葉
信じられぬと 嘆くよりも
人を信じて 傷つくほうがいい
求めないで 優しさなんか
臆病者(おくびょうもの)の 言いわけだから
はじめて愛した あなたのために
飾りもつけずに 贈る言葉
これから始まる 暮らしの中で
だれかがあなたを 愛するでしょう
だけど 私ほど あなたのことを
深く愛した ヤツはいない
遠ざかる影が 人込みに消えた
もう届かない 贈る言葉
もう届かない 贈る言葉
そしてコロナ禍の日々を、1人の日本人としてそれなりに踏ん張って来たいま、この2行が耳に残ったのだった。
信じられぬと 嘆くよりも
人を信じて 傷つくほうがいい
遠くで頑張っている若い仲間たちに「贈りたい」と思った。
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