プロの仕事
半年ぶりに採血検査を受けることにした。大した理由はなくて、歳のせいでホルモン補充薬を最低量服用しているのだが、医師から、半年に一度くらいは血液検査データを確認した方がよいと指導されているからだった。
前回は春の人間ドックで、だった。その前の2年間ほどは、近くのかかりつけ医のおじいちゃん先生に「採血して、TSHと3血球(白血球、赤血球、血小板)と、腎機能、肝機能、膵機能・・・を診てください。それでチラージン(ホルモン剤)を処方してください」と、患者が医師に依頼(指示に近い)をするというとんでもない事をやっていた。先生は面食らったのかもしれない。思いっきり採血を失敗して、最後の採血では3回も刺し直しされてしまった。痛かった。先生、それから半年ほど後に医院を閉めてしまった。私のせい?まあ、それはないか。
それにしても、私がおじいちゃん先生に小生意気な指示を出せたのは、その前の8年間ほど、国立国際医療センターの内分泌科で3か月毎に採血検査を受けて、同じホルモン剤を処方され続けていたからだった。お陰様で私のホルモンの状態は安定し、他の内臓の様子も知ることができて、自身の健康について心安らかに過ごせていた。そんなある日、いつも通りに内分泌科に行くと、「長く検査結果が安定している人は、逆紹介(急性期先端医療施設から、地域医療にかかってもらうように薦める)をするように指示が出て…、と申し訳なさそうに言われてしまった。実は、最初に内分泌の異常を診断して直ぐに国立国際医療センターに紹介状を書いてくださったのが、今はすっかりお歳を召されたおじいちゃん先生だった。その結果、センターの内分泌科の部長医師の診断でついた病名が、亜急性甲状腺炎。半年かけて炎症をしずめ、それからはホルモン剤で安定させてきた。それを振り返り(もちろん、「おじいちゃん先生」なんぞと言わず)、「最初のかかりつけ医にお戻しください。本当にお世話になりました」と、円満にお別れした、というわけである。
おじいちゃん先生の閉院のあと、残ったホルモン剤を服用しつつ、これから体調理をどうしようか、今時の私みたいな「中途半端な健康人」は近くにかかりつけ医を持たないとなあ、と考えつつ、思い立ったのが生まれて初めての人間ドックだった。そして、そこではまたしても「心機能も脳血管も、低め安定」「血圧、とても低い。視力は、よくこれで仕事できている程度」等と不合格と合格ラインすれすれの結果を持って、今のクリニックを訪ねて、ともかく3か月分のホルモン剤を処方していただいた。
今回は、改めて先生のご診断で必要な薬を処方していただきたく、と話して採血となった。そしてその採血のとき「当然だよなあ」と思ったのだが、採血は先生の診断のあとで別のドアから呼ばれて、採血担当の看護師さんが待ち受けていた。その手際のあざやかなこと!国立国際医療センター、人間ドック、そして今のクリニック。あらゆる検査、その結果の診断、診断の結果の治療、処方、治療後の長期フォロー。そのすべての部門で訓練されたプロが働いている。おじいちゃん先生も懐かしいが、これからは、それぞれの専門家と上手にお付き合いできるよう、患者側の視点を整理することがたいせつ、と思った。
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