猫のび

12月中頃、他市に滞在中の出来事だった。出会い頭の接触を避けるために身をかわした拍子に、膝をコンクリート面に強打してしまった。ただ、右半身に荷物を抱えていたので、それが右足のクッションになったのかもしれない。左膝のやや内側を強打。いわゆる膝頭に痛みというか痺れが走った。脳裏を、膝蓋骨骨折、の5文字が浮かぶ。でもいつまでも屈みこんでいても、と思い、直ぐに立ち上がった。ほぼ、すくっと(と本人は思いながら)立てたので、骨折はないな、と判断した。だから周囲の誰にも、何事もなかったように見えたと思う。でも「痛いな…」、大丈夫かな、と不安ではあった。ただ助けを求めるほどのことではないことも事実。それから間もなくホテルに入り、その夜は、入浴時に膝を湯に漬けないようにしたのだが、それは素人なりに温めない、という判断だった。でも、寝ていても痛かった。

もう6年ほど前になるだろうか、出張先のホテルに入るエスカレーターで大転落しことがある。雨で建物前の道が濡れていて、それで濡れた靴がエスカレーター最上段で滑って、真っ逆さまに転落してしまった。あの時は翌朝の検査結果で「骨折なし」「胸部の数か所の打撲」、おまけに「骨密度お見事」とされたのだが、それでも痛みに一睡もできなかった。あの経験のせいか、まあこの程度の痛みなら問題ない、と自己診断ができた。

痛みを意識しながら新幹線に乗り、帰宅して真っ先に膝を見てみて、びっくりした。ホテルで朝見たときはそれほどではなかったのに、いわゆる膝頭の3分の2くらいに赤黒い血腫ができている。傷ついた毛細血管から、歩いたり新幹線に揺られたりしているうちに出血した、ということか。そこで、なんとあの時のエスカレーター転落時にいただいた湿布がまだあったので、それを血腫に張り付けた。内心、あの時の整形の先生に感謝しつつ。

それから一週間ほどで血腫は消え、見た目は何事もなくなった。でも、気にはなった。もしコロナ禍で医療を自由に利用できない雰囲気がなかったら、果たして本当に全く問題はなかったのか調べてもらっていたと思う。これくらいで、しかも痛みはなくなったのだし、という遠慮をしたのは、市民として当然だった。

しかし、ちょうど2週間たった日に唐突に痛みが走った。椅子から立ち上がろうとしたとき、まさにあの強打したところが「固まって動くことを拒否する」ように痛んだ。これはなんだ?!という違和感である。日に1万歩と決めている速歩時も同じところが痛い。それでも、いまは医療にはかかれない。

そこでやってみたのは、座る時も歩く時も食べる時も、果ては、読書はもちろんキーボード操作中も、ともかくバランスよい姿勢をとること。もう一つ、立つとき、座るとき、背中と後ろ足を伸ばすこと。この一瞬ストレッチを「猫のび」と命名したのだが、猫が身近にいるひとなら誰もが知っていると思う。猫族はみな、この猫のびを常時やっているのだ。うーーんと指まで全開(猫爪も全のび)して、両腕も伸ばす、後ろ足も交互に伸ばす。ヨガにも猫のポーズと名付けられたポーズがあるが、私のインストラクターのヨギーはこれを「万能のポーズ」と呼んでいた。

ただ、猫のびのおかげで膝はもう問題ない、わけではない。軽快している程度。膝はいまだに「痛みの理由をしっかり調べろ」言っている。それでも、ストレッチはよいことだと全身で感じつつ悪化させないようにしながら、必要に応じて専門医を訪ねられる日が早いことを期待したい。この程度だから、そう思う。

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母の心、ふんわりんりん…

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