眼科

「こんな時期ですが、新規患者を受け付けてますか」と、私らしくない気弱な声で電話をしてみた。街のアイクリニックとはいえ、新型コロナウイルスの蔓延状態には緊張しているに違いない、と構えた次第である。あっさりと「予約○時でいかがでしょうか」となって、初めて眼科医院を訪れた。

3年ほど前から、ついに白内障の手術(眼内レンズの置換)だろうと覚悟はできていた。仕事で長時間パソコンに向き合っているうちに、視界が白く霧がかかったようになってしまう。頭痛と肩こりが思考を奪うくらいに酷くなって、「うーー」と唸りながらソファに突っ伏す。戸外に出ると、日差しが眩しくて思わず目を閉じてしまう。など等。そんな折に昨年の2月に受けた人間ドックだったのだが、眼科の検査結果に「網膜前幕疑い」と書かれていた!さらに、よく見えてないのでは?と検査技師が呟いたのだった。ほかに悪いところはほぼないのだが、目だけは実感が伴うことなので、来たか、やっぱりな、となった次第。

それでも然るべき(つまり有名な大規模な)眼科へ行かなかったのは、目を酷使しながらも痛い苦しいがないからだったと思う。つまり本当に苦痛がないからだった。めまいがあるわけでもない。ワインでも飲めが目の奥がほぐれて、肩こりも軽くなってしまう。

そして何より、ちょうど私が人間ドックに入った頃から新型コロナウイルスが大問題となり始めて、痛くも苦しくもない状態の身体症状では医療を利用しにくくなった。そこで「眼内レンズの置換は2021年の課題、と自戒して過ぎてきたのだった。

SNSで、このクリニックなら眼科としての設備をそれなりに備えていると判断して、予約をとなった。診察前の検査でなるほど、と思った。まず視力を調べます、とのことだったのだが、途中までは眼鏡を作る過程で経験するのと同じ。そこからが違っていた。眼球の断層写真を撮られてびっくりした。でも私が驚くのも無理はないのだ。なにしろ眼科のクリニックは初めてなのだから。そして医師の診断となった。検査結果は、「疲れ目です」。え?白内障じゃないんですか?「全然。レンズ、きれいですよ」。ではこの、網膜前幕疑いはいかがな状態でしょうか?「これは右目に、ほらここに(眼球の写真をさして)ほんのちょっとあることはありますが、視力にいま関係しているか、というと無いです」。「これ、加齢としか言いようがないものなんですよ(と、ここはちょっと言いにくそうに)」。

そう言われてみると、眼底あたりの血管の枝別れの一か所にモヤッと何かある。「これはつまり、ここが固くなっているということです」と、先生は右手で左上の白衣を握って見せた。「こんな風に、幕がまわりを引っ張っているわけです。でも、ひどくなればこの膜、剝がせます」。でも現時点でこれを問題視する必要は無いのだとか。ああ、そういわれてみれば、疑い、なのだ。素人で自分のこととなると、この「疑い」を冷静に受け止められないのだなあ…。では、眼内レンズの置換は必要ないということで?「いえいえ、全然。きれい」。人間ドックの結果一覧をさらに良く読めば、良く見えていないのでは?については、「眼鏡の作成をお勧め」と示唆が書いてある。これはもうとっくに、パソコン用、読書用、街歩き用まで揃っている。

「では、また半年後くらいに来てみてくださいね」とのことで、ドライアイに良く効くという目薬をいただいて帰ってきた。不安や疑問は専門家に尋ねること、何事もプロ、餅は餅屋、と言い続けてきたくせに、と自嘲しながら。

A.Hashimoto's blog

母の心、ふんわりんりん…

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