バイデン大統領
彼がアメリカの大統領としてふさわしいのかどうか、正直言ってわからない。少なくとも、前大統領の言動も表情も苦手だった私は、やっと「あの人を見なくて済む」ことに、ほっとしている。でもバイデン新大統領が勝利したことを喜んでいるのは、それだけではない。
私は世界政治や経済などには疎い。研究者や評論家によっては、前大統領よりもバイデン氏の政治の方が日本にとって良くないだろう、という評価があることは知っている。それでも、子供の病気、若者のがん、いのち、治癒、たいせつな身体機能の喪失、延々と続く苦闘…、などに寄り添う立場にいると、やはりトップの人物の「為人(ひととなり)」はとても重要だと思う。大統領や首相などの持つ哲学は、政治全体から行政へ、市民生活へと必ず染み渡る。大統領や首相と語り合う機会はほぼないとしても、もし会って話す機会があれば「小児や若者のがんも、治療成績が上がってきて嬉しいけれど、いろいろと後遺症に悩んでいる人もいて。何よりその対応には費用がとても掛かって…」などと、しみじみ話してみたい、と思わせる人かどうか。それは重要なことだという気がしている。
バイデン氏は就任演説で息子さんを脳腫瘍で失った事実に触れ、涙されていた。バイデン氏は前の奥さんとお子さんも、車の事故で同時に失っている。あってはならない喪失を2度も経験しているのだ。だからきっと、78歳という年齢でも引かないのだと思われる。息子さんの分も、最初の奥さんとお子さんの分も生きているのではないだろうか。先に行ってしまった「命」のバトンを引き受けて、次へしっかりと渡そうとしているのではないだろうか。
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