心の中の魔法
たくさん歩くのを目的に、早稲田大学の文学部の横を通って明治通りへ。新大久保のいわゆるコリアタウンを抜けて新宿サブナード(地下街)へ降り、そのまま新宿の東口地下からJR西口広場へと歩く。そこまでで5000歩くらい。昨夜、久々に雨が降ったので、空気がしっとり柔らかい。天気が良いことって、ありがたいな、と思う。湿気も欲しいが、勝手ながら自分が外出するときは晴れてほしいものだ。
公園を抜けながら、人影がまばらなことに気づいて、ああ、今日は月曜日なんだな、と改めて思う。東京の通りの多くは、いつも本当に人が多い。自分もその中の1人だから仕方ないとわかっていても、見知らぬ人と肩が触れ合うほどの距離で過ごすのは、本当にストレスフルなことだ。災害時の避難所で過ごした人や、否応なく難民となった人々の想いはいかほどか、といつも思う。その上いまの大通りは、自転車が縦横にハイスピードで通り過ぎて行く。これはもう、ストレス+恐怖感+緊張感で、冗談で「ボケ防止に良い訓練ね」。
それでも今日はややのんびり。でも昨日の新宿地下街はあふれるように人が行き交っていた。外出自粛というけれど、少なくとも新宿の昼間の地下街くらいしか知らないが、緊急事態宣言前と変わらないと感じる。でも大きく違うのは、誰もがほぼマスクをしていることだ。もちろん私もマスクをして、黙々と歩いて買い物して、カフェでお茶するくらいで帰る。おそらく誰もと同じで、私の歩く姿もかなり緊張感あふれているにちがいない。穏やかに歩けない気分なのだから、仕方ない。感染数の多さ、それでもオリンピックを「コロナに打ち勝った証」として開催すると言ってのける一部の政治家。一方、医療や福祉で懸命に対応している人々を、私は知っている。私には何もできないが、何とか事態が好転するよう祈るような気持ちで過ごしているのだ。そんな想いが、おそらく歩き方に出ているに違いないと思いつつ、スタスタ、スタスタと歩く。
そうして新宿の地下の雑踏を抜けるとき、「人を避けないで突進する人」がこの頃多いなあ、と気づく。人の多い通路は左側を歩き、人が交差する雑踏は直進する人が優先。これは街のルールだ。でも最近は、特に人出が多いところほど、何かに挑むように混雑を力いっぱい歩き抜ける人が気になる。元気で良い、とは言えないほどに肩に力が入っている。なんだか追い詰められたように、不機嫌そう。そこでふと自分もその1人にならないように自戒するのだが、緊張感を緩めるための有効な魔法がある。今まで出会ったたいせつな仲間たちとの、語り合い・分かち合いを思い起こすことだ。この緊張感あふれる日々を、みな、懸命に生きている。その魔法の思い出をたくさん持っていることが、幸いである。
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