材木が無い!

馴染みの建築施工会社の社長さんが、我が家の玄関を入るなり「いま建築業界はたいへんなんですよ」と言う。建築用材木の、とりわけ柱級の太さの建材が手に入らないのだそうだ。この社長さんとは3年前に我が家の大改修をお願して以来のお付き合いなのだが、今回は換気扇を1つ付け替えてほしいと依頼して、「ひとまず見に行きます」となったのだった。

水漏れが酷いとか、ドアが動かないなどの急務ではなくて、換気扇の音が急に大きくなって耳障りという程度。そんなのんびりし依頼だったこともあり、お会いするのが久々だったこともあり、業界やら林野庁の慌てぶりでしばらく盛り上がった。

それによれば、日本の建材不足はアメリカで空前の建築ブームが起きていることが理由だそうだ。アメリカではいま働き手のリモートワークへのシフトで、地方に越して戸建ての家を新築する人が急増しているのだそうだ。それにしたがった建材のニーズが爆発的に増えた、だからヨーロッパの木材などがアメリカに集中して、もとより輸入量が少なかった日本には回さないようになってしまった、という説明だった。

でもそこで、私も社長も「待てよ」と言いたい、ということで合意となった。日本は昔から木と紙が建築資材の基本。だからこそ杉やら檜が山野を覆っているのでは?切り出しては跡に若木を植えて、数十年後の資材として準備してきたのではないのだろうか。

実は私の父は林野庁関係の地方公務員だった。私が物心つくころに、近隣の山の雑木林を開拓して杉林に変えて行く仕事をしていた。それを言うと、そこなんですよ、と社長。「結局、大量消費には外材を使うように仕向けられて来たんです」「いつの間にか、柱や梁のような建築の中心になる木材も含めて輸入材を安く入手できるようになって、もう50年くらい経ちます」。そういえば故郷の山あいの村にいくつかあった製材所も、近年は見受けなくなっていた。子供心にも、製材所に近づいただけで木の良い匂いに癒されたものだった。家の真ん中にどっしりと立っていた大黒柱や、二階で見上げた太い梁の安定感のある佇まいが懐かしい。

そういえば、どこかで手にした知識だが、「アルミサッシの熱伝導率は、木の2,000倍」だとか。つまり木の窓枠は一見寒くて暑そうだが、実はアルミサッシよりは暖かくて涼しいということになる。寒いのは木のゆがみで生じる隙間風なのだ。我が家のベランダはアルミ素材。30年ほど前は、当たり前の建材でそうなった。しかしいつだったか、真夏のベランダに走り出た猫がアルミ部分に触れて、その暑さに驚いて飛び上がって、速攻戻ってきたことがある。鉢の花も、暑さで参ってしまうことが多い。その恐るべき熱伝導率を知って以来「木のベランダに変えたい…」と考えていた。社長にそれを言うと、「まあ、おそらく3年くらい後なら」と苦笑いされてしまった。

A.Hashimoto's blog

母の心、ふんわりんりん…

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