けん玉名人
身近にこんな‘業師’がいると思わなかった。つばさ理事の宮城順さんのことなのだが、赤いけん玉が彼の身体の前では止まって見える。
日頃はメールで連絡を取り合うだけの人たちに声をかけて、ZOOMお花見を開催。以前からけん玉が得意だと聞いていた宮城さんに「余興でやって」とお願いしたのだった。「いいですよ。ただ、僕のネット環境が不調なので橋本さん家に行ってよいなら」ということで、私のパソコン前での実演となった。
もしもしカメよ、カメさんよ…、と歌いながら動かす初級編から、私は横に立ったまま唖然。最後の披露は両手で同じ動きをして見せた。ZOOM参加者からの声が、すごい、すごいと重なる。それで、「皆さん、それなりに得意技があるじゃない?ほら、〇さんは見事に楽器を奏でるし、〇さんはマラソンで距離を上げてきてるでしょう?」と振ってみた。するとやっぱり皆さん、子どもの頃から(あるいは部活動の続きで)の趣味やスポーツがある。何よりのポイントは、闘病開始からのちに気晴らしに始めたことが、今は人生の友になっているということだ。
宮城さんも、入院中に小学校の担任の先生がお見舞いにくれたけん玉がきっかけだったとか。「だから、ベッドの上で座って練習したんですよ。時々足にぶつけて青あざ作って、担当の先生に怒られたり(笑)」。そして同じようにして趣味になったのが、折り紙だとか。そのZOOM花見では、皆さんと賑やかに情報交換している間に、一枚の紙から3羽の鶴ができあがっていた!
血液がんと小児血液腫瘍は、医・薬の尽力のお蔭で今は長期に付き合う疾患となった。しかし診断前の健康状態に「何事もなかったように」戻れるわけではない。治療のために時間を費やし(時間を失う)、予定が狂って(周囲の友人が順調に見えて)焦る。副作用、後遺症、再発への不安、二次がんへの怖れ。ただ、だからこそ、かな、貴重な友人ができる。ほかで言ってもわからない気持ちが無言でいても通じる仲間ができる。
宮城さんのけん玉と折り紙の技を視た参加者のお1人が、「実は私、副作用でモヤモヤしていたのが、最近ベーゴマを本気でやったら気分が凄くすっとしたんですよ」と言う。そこで皆で話し合った。そうそう、これからの長い‘闘病もある人生’は、皆で趣味や得意技を交歓しながら行きましょう。「遊びながら、語り合い・分かち合いしながら、長生きしようね」。
私は、「橋本さんて、まだ患者さん支援している。仙人みたいだ」と笑われるまで。実は私もその頃までには極めたい‘技’があるのだが、それが何かは今は内緒です。
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