医療の中の当事者
癌の診断を受けて戸惑わない人はいない。「治療すれば治るタイプです」と言われてもにわかには気持ちは落ち着かない。当然。疾患についても治療法についても、それまで考えたこともないのだから。昨日まで癌=死のイメージが遠くの方にある普通の暮らしだった。癌だけではないかもしれない。放置すれば死に至る病は数多あって、こうしている間にもその診断を受けてしまった人がいるかもしれない。さぞ悲しくて怖いだろう。その人が「治療法はあるのだから、落ち着いて疾患に向き合って行こう」なんぞと思えるのはずっと後のことだろう。
では重篤な疾患を診断された本人に、身近にいる立場の人はどう振舞えばよいのだろう。血液がん電話相談を運営して2万件超の本人・家族からの相談を受けて、いま言えることは、先ずはその人が倒れないように背中から支える態勢を取ること。つまり、無言で寄り添う。疾患について、治療法について、知っているのは「あなたの疾患を診断した医師」である。家に帰ってインターネットで調べることはできるし、家族でああでもないこうでもないという議論も開始できるし、身近に別の領域だが医師や看護師がいるかもしれない。しかし、たいせつな事は、あなたの「身体の中の疾患のデータ」は医師が持っていて、医師はこのデータを基に「しか」治療判断はしないし、今後の治療方針もたてない。急性期(寛解になって暮らしながらの経過観察に至るまで)の、医療と当事者の立ち位置の違いを理解することは、医療との協働で疾患を乗り越えていくためのヒントになるのではないか、と思う。
当事者と医療者の立ち位置
当事者 医療関係者
・診断から開始 ・仕事上の責任で開始
・素人 ・基礎知識
・1人(or最低単位) ・専門家
・生活者 ・組織(複数)で対応
・人生そのもの ・役割の交代がある
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