一億円の夢
私がセミナー開催時などで、会場に向けてお願いする寄附募集「つばさの活動費のご寄附、おいくらでも嬉しいです」に、一呼吸してから加えるショートジョーク「どなたか1億円あまっておられたら、帰りがけに私に声を掛けてください」(笑)。でも結構、本気。
2010年から5年間、私はつばさ支援基金で1億3千万円ほどを運用・助成した経験がある。今夏の8月24日の京都フォーラムでは、「あの日々に助成金を受給しておりました。これからは正会員としてつばさを支えたい」という参加者さんがいて、本当に嬉しかった。そういえば支援基金運営中も、「1年半受給していて、そのお金でパソコン教室に通いました。それで取れた資格で就職できました。もう、助成は止めてくださってけっこうです」という連絡くださった方もいて、これもとても大きな手応えをいただいたのだった。
とても弱い立場にあると感じる対象(人や生き物や山河)を救おう、として有志から資金拠出があって、時間的体力的に余裕がある有志が集まってその資金を運用する。それが支援基金だと思う。世界で、国内で、様々な支援活動が多くの弱者を窮地から救っている。戦地で、人口密集地で、被災地で。
ただ、基金という支援活動は、必ず終わりが来る。当初用意された資金は、目的に沿って放出(出金)するのが義務付けられる。それが「〇〇支援基金」だからだ。つまり一個人や一法人でできる資金運用は「時限」で、数年で役割を終わる。あるいは稀に、「その問題が解決したので」支援の必要性がなくなった、という珍しくも嬉しい理由もあるかもしれない。
つばさ支援基金は、資金の大拠出者が寄附を終わると決めたことで、2015年に一先ず休止となった。完全閉鎖にしなかったのは、救済対象者がいなくなったわけではないからだ。つばさ支援基金の対象者「血液がんの長期療養による貧困」は同じようにいて、さらに人数は増え続けて、それに新たに今は「妊孕性温存のための費用(女児、女性では50万円)も何とか支援したい。
温存のための費用は、治療の副作用対策なのだからということで、国に保険適用を請願しているが、請願が受け入れられたとしても成立・稼働するまでに少なくとも1年半はかかる。こうしている間にも、15歳の子の小児がん治療に備えて卵子保存をしたとして、50万円の捻出に泣いている若い両親がいるかもしれない。18歳の大学生が、入学後の日々の学費やアパート代は自力で払っていたかもしれないところで、がんになったら?「頑張って大学卒業してね」と送り出してくれたお母さんは、母子家庭で、本業とパートを掛け持ちしてこの子の入学金を積み立てていたのかもしれない。
治療も将来の夢も学校へ通うことも、諦めてはいけない。支援がいま苦しんでいる人に、間に合わないのはいけない。「骨髄バンクは必要です」と総理大臣の承認がいただけたのに、骨髄バンクが稼働するまでに丸2年もかかった。その間に息子は悪化して、骨髄バンクがやっと稼働した2か月後に母のもとから去ってしまった。お金でも薬でも制度でも、間に合わないのはいけない。
いま1億円、あったら。がん医療費貧困に落ち込んだ若者や若い両親を、どれだけ救えるだろう。
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