帰り道

おしゃべりの余韻や、まだ舌の上に残るデザートの甘さを確かめながら帰る時間の心地よさ。時には、少し自己主張が過ぎたかな、〇さんはもっと話したかったのかも。そんな記憶が軽い後悔も含めて、胸の辺りに漂っている。笑いながら、時には泣きながら、それぞれのわだかまりから湧き出て来た言葉の数々を天井に跳ね上げて、それをグラスに受け止め合う。だからこそ、またあの集まりに行こうとも思う。

紙で配布された議事進行表と資料を手元に話し合い、2時間くらいかかる緊張する会議でも、会場を後にして帰る道では、いつの間にか、あれで良かったか、通じなかった言葉はなかったか、と振り返っている。

そう、確かに。帰り道はとても大事なクールダウンの行程なのだ。頭の真ん中に居座った1つのテーマを鎮めて、私の頭の中をリセット、開放する大事なステップなのだ。いつもそう思ってきた。人が人に会ってはならない、という事態になってほぼ2か月。この間に、唐突に会議、学習、飲み会までがOnlineで行われるようになった。この上なく便利な連絡ツールではあるが、終わったとたんに戻るのは、開始した時と同じ自分のパソコンの前ということになる。クールダウンどころか、そのまま次のOnlineでの会議に移ることもある。

今日、日本全国の緊急事態宣言が解除されることになった。私はこの週末、準備に準備を重ねてきた医療フォーラムの司会のために、本当に久々に「出かけて」行く。フォーラムはOnlineで配信されるので、講演者や視聴者は仕事場や自宅から。でも私はスタジオに出向く。地下鉄に乗って、少し歩いて。

そして、終わればまた少し歩いて地下に乗って帰ってくる。いつものように、あれで良かったかな、こうすれば良かったな、などの反省と振り返りを繰り返しながら。そうそう、地下鉄を降りたら近くのスーパーに寄って、夏場の大好きな果物の1つ、西瓜を買って帰ろうかな。ご苦労さんビールと一緒に。やっぱり、帰り道は楽しい。