おじさん、負けないでよ

 ようやくNewsletterひろばの編集も終了が見えてきたので、以前からほしかった本を探しに出た。気晴らしも兼ねているので、地下鉄に乗って行く大型書店を目指した。5駅、ちょうど10分。単行本なら5ページくらいは読める。

連休に入った日の午後一番。車内はがらがらだった。私は座るのと同時に本を開いて、読み始めた。その時だった。向かいの席にいた初老の男性がスマホを開いていたのだが、その男性がいきなりスマホを叩いたのだ。同時に、言葉は聴き取れなかったが、なにか呪いの言葉を吐いた。

車内にはほかに人がいないので、私は本から顔をあげないまま「どうしよう」と緊張してしまった。スマホを叩いたのは、操作がうまくできなかったからか、送られて来たメールやSNSの発信を読んだからか。前者であってほしいと願った。自分のスマホ音痴を嘆く程度なら、怒りは内向きだと思う。しかしそれが、誰かのメールや、誰かが発した意見への怒りだとすると、それは無限に広がる可能性がある。向かいに座っている私も怒りが広がる行程にいることになり、その広がる怒りの炎にまかれる可能性もあるわけだ。

それからも男性はスマホを両手で持って凝視していたのだが、そうこうしているうちに幸い私は目的地に着いた。リュックに手早く本を放りこみ、右肩にかけて、いつもながらの速足で降りた。そしてこれもまたいつも通りの速足で、行き交う人の間を歩きながら、「しっかりしてよ、おじさん」と思った。もう大人でしょ。いろいろあったでしょう、これまで。若い時には痛い目にあい、思いがけなく失ったもの(人との関係)、ない?そこから時間が経って大人の部類の年齢になった(どう見ても、若い人にはみえませんでしたよ)。自分の焦り、苛立ち、カビが生えたプライド。そんなものに、負けないで。怒りって、何も生みません。

スマホでSNSに参加するという近年どころか「現在」のツールを使うなら、不慣れや出遅れなんてあったりまえ、です。その方法がわからないなら、気づけばスマホを握っていた若者におしえてもらえば良い。スマホ世代の若者は、SNSの発信をよほどの内容じゃないかぎり「自分にとって必要なことしか、受けとらない」(さらっと受け流す)。そんな感性もおしえてもらえばいい。そのかわり、正しい敬語の使い方、本物の出汁の利いたお料理の美味しさ、煎茶と玉露の違い…、などなど、経験を積んだものにしかわからないことを、まだあなたの半分も生きてない若者におしえて、唸らせてあげれば良いのです。そして、時には身近な人の悲しみを引き受けて、泣くための肩を貸してあげましょう。黙って、ね。

A.Hashimoto's blog

母の心、ふんわりんりん…

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