やさしい時間

数年前、東京大学医科学研究所の講堂をお借りしてフォーラムを開催したときだった。講師のお1人として理学療法士の野口さんが登壇したのだが、印象的だったのが「自分の身体の声を聴き、センスを磨くことはとても重要」という、‘意識コントロール’のお話だった。つまり自分の身体の状況を見つめながらリハビリテーションを受けることで、より効果が上がる、というわけだが、この日はちょっとした裏話があった。講演が開始する前に、講師控室で昼食をとりながら打ち合わせしていたときだった。講師のお1人の先生が「あまりに肩凝りがひどいので、この間は街のマッサージに行ってきた。あまりに気持ちよくて、熟睡してしまった(笑)。だけど、家に帰ったら全身が痛くて。凝り返し、というやつですかね」とのこと。血液内科の先生が街のマッサージに行くのか、と私は思いつつ、「おつかれですよねえ、先生方」と笑いながら言ったのだが、野口さんが「それは、寝ちゃったからですよ」とキリっと指摘。その後での講演で野口さんがていねいにお話されたのが、「意識のコントロール」だったのだ。

なるほど、と思う。マッサージや鍼などで、固まっている部分に施術してもらうと本当に心地よい。その心地よさは「的確に患部に対応できているから」「さすがに〇さんが勧めてくれただけあって、腕がいいから」と思っていたのだが、すこし違うかもしれない。鍼師さん、整体師さんは、じっと私の痛みに向き合い、「その時間はそのことだけに」集中してくれている。私も「自身が疲れていること」「その疲れで痛んでいること」を認め、癒されることに身を委ねることができる。この時間は全てあなたのために。そう感じさせてくれることが先ず、素晴らしい価値なのだと改めて思う。そのように鍛錬されたからこそ、それなりの値段が取れるのだろう。

そういえば、整体師さんにも鍼師さんにも2年くらいご無沙汰していた。「お疲れですねえ」と言ってもらいに、そろそろ行くことにしようか。

A.Hashimoto's blog

母の心、ふんわりんりん…

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